+天使湯の秘密+
<カガリSIDE>
「あっ」
(脱衣所にタオル忘れてきちゃった)
さっきまでラクスと一緒にお風呂に入っていた時だろう。ラクスはけっこう長風呂そうなので先に私の方が上がっていたのだ。
お風呂の「天使湯」とかかれた暖簾をくぐり脱衣所にいくと、案の定私のタオルが置きっぱなしであった。
隣にはラクスの着替えがあったのでまだ入ってるのだろう。本当にお風呂好きだな。
「あった、あった♪気づいてよかった」
しかしこのAAに温泉があるのも驚いたが暖簾に「天使湯」て・・・・・・命名は絶対ラクスだな。ってか温泉作らせたのもきっとあの子だ、間違いなく。
あの子の笑顔には無言の圧力があるからなぁ〜と苦笑しながら脱衣所を後にしようとした時に風呂場から声が聞こえた。
「いいお湯ですわね」
(この声はラクスか。誰か一緒に入ってるのかな?)
「うん。ほんとだね」
「!?」
今決してありえない、いやあってはならない声が聞こえなかったか?いや、まさかな。いくら何でもそれはないだろう。
ラクスの声ともう一人いるであろう人物の声が私の良く知ってる奴の声に似ているような気がしたがそんなはずはない。
なぜならここは「女湯」なのですよ?きっとマリュー艦長とか他の誰かだろうと脱衣所を見渡してみたが、ラクス以外の服は置いていない。
(・・・・・・HAHAHA、いやいやまさかうちの子に限ってそんな事・・・・・・)
嫌すぎる予感を胸にどうか外れてくれと祈りを馳せつつ、お風呂場の近くまで行き耳を澄ませてみると
「ラクスの肌って真っ白で綺麗だね」
「イヤですわ♪恥ずかしいのであまりじっと見ないで下さいな、キラ」
そっと中の様子を覗っていた私はあまりのショックにガクっと膝から崩れ落ち、気が遠くなるのを必死で堪える。逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ・・・・・・
見たくなかった現実から逃避する弱い心を奮い立たせなんとか失いかけた自分を取り戻す。そして身内の恥の悲しみを怒りの力に変え絶望の淵から私は立ち上がる。
あの超ドヘン○イの弟に、この姉直々に教育的指導を施してやらねば!!他の人が入ってきても平気で一緒に入ってそうでなんか恐い!!私がやらねば誰がやる。
そうじゃなきゃ・・・・・・そうじゃなかきゃあいつ自分はどこのアニメ雑誌でもずっと1位もしくは上位だから何をやっても許されるなどと思い上がりな腹黒い主人公になってしまう!!人生を舐めるなよ、小僧!!
(この、バカチンがぁ!!ファンの夢を壊すような、いやある意味ファンの望むようなおいしいお約束な展開まで行きおってからに。その穢れた魂、私の正義の鉄槌で浄化してやる!!原型留めないほどに!!)
<お風呂場SIDE>
「ラクスの肌って真っ白で綺麗だね」
キラは私の隣でじっと私の肌を見つめてニコニコしながらそう呟いた。
「イヤですわ♪恥ずかしいのであまりじっと見ないで下さいな、キラ」
ギュっと両腕で胸を隠しながら、少しの恥ずかしさにキラに背を向けると、キラはごめんごめんと苦笑しながらまた私の隣に来て一緒に肩を並べた。
私もまたニコリと笑いながら隣に来てくれたキラの方にゆっくりと体を預けるようにするとキラは優しく預けた体を支えてくれた。
「温泉ってやっぱりいいよね。なんかホっとする」
「はい。キラはゆっくりと疲れを癒して下さいね」
ありがとうと笑ってキラはタオルをギュっと絞ってから、頭の上に乗せるのを見ていると、何だかそんな行為がどこか可笑しくてクスクスを笑みがこぼれてしまう。
「うん?どうしたの?」
「いえ、そのキラがお風呂に入る時のスタイルはここでも一緒だなと思いまして」
なんだろう?とどの事を言っているのかわからないらしく、タオルを頭に乗せたままではてなと首を傾げる所を見て、その光景があまりにも似合いすぎていてまた可笑しくて笑ってしまう。
キラは周りの人の気持ちや物事に対しては鋭いのですが、自分の事となると全くと言っていいほど鈍くなる。またそこがキラらしいと言えばそうなのですが。
そうこう思っているうちに頭のタオルに手を伸ばしてようやく気づいたらしい。
「これはね、お風呂に入る時のルールで、いわばお風呂での正装なんだよ?」
「まぁ、そうだったのですか?」
「うん。そうなんだって・・・・・・てTVで言ってた」
「まぁ、キラったら」
二人顔を見合わせて笑いあった。私とキラが一緒にお風呂に入るのは別にめずらしい事ではありません。実は私たちはマルキオ様の所に一緒に住んでいる時から既に一緒に入っておりました。
初めの方はキラも私もさすがに恥ずかしかったのですが、何度も一緒に入っているうちにその恥ずかしさも消えて、一緒に入るのが当たり前になってしまっていました。
事の発端はカリダ様、いえお母様がキラがお風呂に入っている時に
「ラクスさんも一緒にあの子と入ってきたら?あの子きっと喜ぶわ♪」
「えぇ!?でも、そんな私少し恥ずかしいですわ・・・・・・それにキラも驚きますわ」
「大丈夫よ、キラも男の子ですもの。嬉しいに決まってますわ。相手がラクスさん、あなたならなおさら・・・・・・ねっ♪」
「キラが?でしたら嬉しいのですが」
「ええ、だから自信持って。実は私もそれで今の旦那をGETしたのよ♪」
「お母様、私行ってきます!!」
「健闘を祈るわ!!」
ヒシとお母様と抱き合ってから、グッジョブと親指を立てて見送って下さったお母様を後にしてキラのお風呂場に向かい一緒に入ったのでした。
無論キラは私を見て驚き、「キャー!!」と女の子のように叫び声を上げタオルで胸を隠しながら湯船に急いで浸かるの見て何とも言えない切ない気分に陥ったのはなぜでしょう?
そんなこんなでそれからも一緒に入るようになり、その時からもキラは頭の上にタオルを乗せておりました。きっとそれが一番落ち着くのでしょう。私は見ていてその姿は妙に似合うので可笑しいのですがそれもまた素敵です。
「でもまさか、AAでも一緒にお風呂ってゆーか温泉に入れるとは思わなかったよ」
「温泉は疲れをとるのに一番ですから。心も体も癒してくれます。だから作って頂いたのですわ」
「あぁ、やっぱりラクスだったんだね。じゃぁあの暖簾の名前も・・・・・・」
「はい、もちろん私ですわ♪可愛いでしょう?でも良く私だとおわかりになりましたね。さすがはキラですわ♪」
「えっ、うん、まぁ、あはははは・・・・・・」
「うふふふふ♪」
(多分、誰でも気がつくと思うんだけど・・・・・・)
「でも、僕こっちに来ても大丈夫なのかな?他の人が来たら大変だと思うけど」
「大丈夫ですわ。カガリさんは先ほど上がられましたし、この時間は誰も入りに来ませんし」
「う〜ん、ならいいけど」
「ご心配でしたら、私が男湯の方に行きましょうか?」
「それはダメ、絶対に。それなら僕がこっちに来る。」
キラがお恥ずかしいのであれば私がというつもりで言ったのですが、一瞬にしてキッパリと斬られました。しかもものすごい真剣なお顔で。なぜでしょう?
「じゃぁ僕ちょっと体を洗ってくるよ」
「はい、わかりました♪」
「・・・・・・」
「♪」
「えっと・・・・・・ラクス、聞いていい?」
「はい、何でしょう?」
「何してるの?」
「えっ、ですからキラが体を洗うと言いましたので、お背中を流して差し上げようかと」
「いや、いいよってゆーか、なんで背中を流すのに、タオルじゃなくてラクス自分の身体を泡立ててるの?」
「ですから、キラの背中を洗ってさしあげようと」
「なにで?」
「身体で♪」
「ダメだって!!そんなアダルティックなネタを出してきたら、色んな方面から怒られるでしょ!ってゆーかびっくりだよ!
僕以上にびっくりして何か飲み物飲みながら読んでる人は吹き出してるよ。PCがジュースまみれになっても僕のせいじゃないからね!」
「別に照れなくても。いつもやっていたじゃないですか♪」
「・・・・・・それはもうみんなの想像にまかせるよ。でも今回はダメ。そうじゃないと怒られるから。僕ではなく書いた誰かが怒られるから!」
「残念ですわ。でしたらタオルでなら構いませんわよね?キラのお背中流させて下さいな♪」
「えっ、う、うん。なら、お願いするよ」
「はい♪」
少し残念ですが仕方ありません。ボディーソープで泡立てた身体をお湯で流してからタオルを手にとります。まぁ、今回は仕方ないです、諦めましょう。
ですがいくらでもチャンスはあるわけですので大丈夫ですわ。明日にでももう一度チャレンジしてみましょう♪
ゴシゴシとキラの背中を流していきます。これも別に初めてといったわけではないので、どれくらいの力加減がキラが一番気持ちいのかわかっております。なにせキラの未来の妻ですから♪
「気持ちいいですか?」
「うん、とっても。ありがとうね」
「はい♪」
キラの背中を流していてキラも2年前と大分体つきが逞しくなられましたが、それでも女の子の肌のようにきめ細やかで綺麗です。ううぅ、少し羨ましいですわ。
「カガリさ・・・・・・大丈夫だった?」
急に真剣なキラの声が私の耳に届きました。私はキラの背中を洗うタオルの手を止めます。
「カガリさんなら、もう大丈夫ですよ」
「そっか・・・・・・良かった。大分落ち込んでいたみたいだから。それに僕けっこうカガリにきつく当たっちゃったし・・・・・・」
「ですがあの時のカガリさんには必要な事だったのでしょう?」
「うん。誰かが言わないとダメだったから。なら僕がってそう思って」
「カガリさんもキラの言いたい事はちゃんとわかってくれていますよ。その為に自分が何をしなければいけないのか、きっとカガリさんも自分の答えに辿り着きます。そうキラも信じているのでしょう?」
「うん、ありがとう。カガリの助けになってくれて」
「いいえ、私は何もしていませんわ。カガリさんは大切なお友達ですから。お話を聞いて一緒にお風呂に入っただけです。私もカガリさんを信じていますから」
「うん」
「それに・・・・・・私にとってもカガリさんはいずれお姉様になる人ですから。だからキラも元気を出して下さいな♪」
ギュっと後ろからキラを抱きしめる。あの時から今も誰よりも優しいあなただから、一人で全てを背負ってしまいそうになる。
その背負うものを一緒に背負いそれを支えるのが私の役目。あの時からずっと、これからもずっと私はあなたの傍におりますわ。
「・・・・・・ラクス・・・・・・もう大丈夫だから、あの・・・・・・」
「はい?」
「・・・・・・背中に胸、あたってるから・・・・・・」
キラは恥ずかしさのあまり真っ赤になった顔で下を向いている。そういえば、キラの背中を洗っていた最中でした。私はタオル一枚しか羽織っておりませんし。私は悪戯っぽくクスリと笑って真っ赤になったキラの耳元で
「元気、出ました?」
「うん・・・・・・まぁ、色々と(////)」
「それは良かったです。次は・・・・・・前を洗いましょうか?」
「それは勘弁して下さい!」
「まぁ、残念♪」
<カガリSIDE>
(キラ・・・・・ラクス・・・・・・)
私はさっきまで愚弟の色魔ぶりの所業に正義の鉄槌をくらわしてやろうと、勢い勇んでいたものはもう全て吹っ飛んでしまっていた。
あれからもう少しだけお風呂場の内容を聞いていて、あきれかえるほどのバカップルぶりに多少・・・・・・いや激しいイラつきを覚えたものの、
それほど変な事をする事もなくまぁこれくらないならと思っていたが、ついに背中を流し合うという荒業に出てしまった。
お風呂の流しっことなれば嬉し恥ずかしハプニングを期待してしまう事必死。ここで私が止めなければ教育衛生上やりすぎるとシャレにならない展開へと転んでしまったら、誰が責任を取る?
キラやラクス、姉の私?違う。この話を書いた誰かだ。色んな所から怒られてしまう!!本当に泣きたいのはその人だ(涙)
これ以上は危険と判断した私は教育的指導というなの正義の鉄槌を突貫すべく踏み切ろうとした時に、さっきの会話を聞いて知ってしまった。キラとラクスが私の事をずっと心配してくれていた事に。
私のためにキラがあえて厳しく叱咤してくれた事。
さっきの風呂での会話でもいつもそっと隣で助言をしてくれたのはラクスだ。
キラもラクスもずっとこんな私を信じてくれていたんだ。不甲斐無かった私をずっと。
(キラ、ラクス・・・・・・ありがとうな。私も頑張るよ。私はもう大丈夫だ)
情けない事にちょっと潤んでしまった瞳を袖で拭いながら、静かにその場を後にする。
(誰かに見つからないように、二人ともほどほどにな。)
そう思って今度こそ脱衣所から出て行こうとしたその時
「今度は僕が洗ってあげるね」
「はい、ありがとうございま、きゃっ、キラっ、そこは・・・・ちがっ・・・んっ、む、胸ですわ・・・・・・」
「うん♪そうだね」
「ちょっ・・・・・・まっ・・・んっ・・・・さっきは・・・あっ・・・キラが・・・ダメって・・・・・・」
「うん、でもちょっとさっきので、もう我慢できない。だから・・・・・・ねっ♪」
「あっ・・・やぁ・・・ん・・・っ・・・キラ・・・っ誰か来たら・・・っ」
「大丈夫だよ。ほら力抜いて」
「あ・・・で・・・でも・・・っ」
今私の中で音を立てて激しく人として失ってはならない大切な何かがぶち切れたような気がした・・・・・・
「コラ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!何でお前が女湯にいるんだ!!」
「あれ?カガリ戻ってきちゃったの?いいところだったのに・・・・・・」
「いいから出てけッ!!そして還せっ!私の純粋な乙女の人を信じる気持ちを還せっ〜〜〜〜〜!!!」
おわり
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なんと天神十夜さんが誕生日祝いにと以前私が描いたアホえろ漫画とリンクさせた超素敵小説をプレゼントして下さいました!
キララクのやり取りに萌えすぎて大変です(笑)
さらにマルキオ邸にいた頃から一緒に入浴していたという言葉にあらぬ妄想をしてしまったのは私だけではないはずですw
カガリのツッコミ(心理描写)も本当に面白くて…!
天神さん、本当に有難う御座いましたv